2008年08月08日 (金) 08:02 * 編集
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2005年07月09日 (土) 22:11 * 編集
まただ。また泣いてる。
さっきミルクもあげたばかりなのに。 おむつだってまだ濡れてないでしょ。 どうしてこんなに大きい声が出せるんだろう。 まだ産まれたばかりの小さな体で。 泣きわめく我が子を眺めて、私は途方に暮れる。 新生児は三時間おきに泣くもんだと思っていた。 他の子に比べても、この泣きっぷりは異常に思える。 どこか痛いのかと病院にも連れて行ったけれど、ただの夜泣きですよと看護婦さんに笑われた。 でも、ここのところ1時間も熟睡できていない。 私の何が悪いんだろう。 抱っこの仕方が悪いの? ミルクが足りないの? それとも、愛情不足? 私は駄目な母親だ。 また泣き出した赤ん坊を抱っこして、私も泣き出してしまった。 今日は、義父と義母が初めて娘に会いに来る日。 うちの姫は、大人しく笑ってくれるだろうか。 びぇぇぇぇぇぇ!!! 駄目だ。いつもより派手に泣いてる。 おばあちゃん、おじいちゃんが来たというのに、笑顔の一つも見せない。 義母に抱かれて、火がついたように泣きわめく娘。 きっと、私の育て方が悪いんだ。 情けなくなって肩を落とす。 このまま、まともに子育てなんかできるんだろうか。 「まぁまぁ!こんなに泣いて。元気な赤ちゃんでおばぁちゃん嬉しいわ」 義母の明るい声に顔を上げる。 「子供はね、泣くのが仕事。この子は肺が強くなるわねぇ」 あっけらかんと話す義母の横で、義父も口を開く。 「そういえば敬一も良く泣いてたな。たまにはあいつにも世話をさせんか」 「あの子なんか、放っておいたけど大きくなったわよ」 義母は泣きわめく娘を、立ったままであやし続けた。 膝が痛い痛いと言っていたのに。 飽くことなく娘の顔を覗き込んでは、その頬を愛しそうに撫でる義父。 いつも無愛想で、滅多に笑顔も見せない人なのに。 夕方、名残惜しそうに二人は帰っていった。 おっぱいがよく出るようにと、義母お手製の団子汁を残して。 「根を詰めすぎないようにね。この子は私達の大事な孫だけど、貴女も大事な娘なんだから」 帰り際、義母はそう言って私の肩を叩いた。 団子汁のおかげか、今晩はおっぱいの出が良い気がする。 「のんびり行こうか」 腕の中でおっぱいにしがみつく温もりに声を掛ける。 小さな怪獣が、やっと満足そうに笑った。 ![]() ランキング投票へ 両親への贈り物 2005年07月09日 (土) 16:01 * 編集
「私、一人で産む」
「でも・・・子供なんて・・・」 凛とした彼女の表情。 私は彼女の告白に、ただおろおろするばかり。 「ちゃんと相談した方がいいよ」 「ううん。もう決めたから」 愛おしそうにお腹を撫でる彼女。 細身の彼女の体には、小さな命が宿っている。 自分の体に命が宿る。 今の私には想像も付かない。 命をかけて、新しい生命を生み出す。 そのあとは、自分の若さや時間を削って育児に追われる日々。 若さに満ちあふれて美しい彼女。 その突然の妊娠は、私には不幸に見えた。 「とりあえず実家に帰ることにしたの。彼にも言ってないけど」 珈琲が好きだった彼女は、今オレンジジュースを飲んでいる。 「カフェインとか。あまり良くないんだって」 穏やかに笑む彼女の横顔が、ウィンドウに映る。 彼女が、一人で姿を消してから数ヶ月。 私の部屋に、一枚のポストカードが届いた。 「うまれたよ」 彼女の手書きのメッセージ。 そして。 「元気な女の子です!」 彼女の文字の下には、不格好な男性の文字。 「もぉ・・・幸せそうな顔」 涙目になりながら、写真入りのカードを眺める。 今までで一番美しい彼女の隣には、緊張した面持ちで赤ちゃんを抱く男性の姿。 彼女そっくりの目元。 彼そっくりの口元。 天使を授かった二人に 心からの祝福を。 出産祝い・メモリアルグッズへ ランキング投票へ 2005年07月09日 (土) 13:22 * 編集
「私、できちゃったみたい」
彼女は、あっけらかんと俺に告げた。 突然のことで、声が出ない。 彼女のことはとても大事だ。 でも、俺たちは若すぎる。 大学を出たばかりの彼女と俺。 まだまだ遊びたいし、やりたいことも山のようにある。 子供の俺たちが、子供なんて。 正直、気が重い。 「もう、逢わない方がいいでしょ」 彼女は、いつものさばさばした調子で伝票をつかむ。 「私のことは気にしなくていいから。元気でね」 彼女の後ろ姿が人混みに紛れる。 俺は、引き止めることもできなかった。 彼女は綺麗に俺の前から姿を消した。 勇気を出して、アパートのドアを開けた時にはもぬけの殻で。 俺の、したいこと。 俺のこれからの人生。 「ねぇねぇ、ちょっと見てよ」 いつか、街路樹の脇に突然しゃがみ込んだ彼女。 「ほらほら、かたつむり。こんな都会にもいるんだね」 「そんなのどうだっていいじゃん」 いつも、彼女の目には沢山のものが映っていた。 忙しさに紛れて見逃すものも。 当たり前のように広がる空の中にも。 何かを見つけては、きらきらと目を輝かせていたっけ。 いつも、急かしてばかりの俺。 刺激にしか反応しない鈍った五感。 当たり前のものは、いつも失ってからその価値に気付く。 でも、それじゃ遅いんだ。 微睡みから目覚めて、君の姿を探す。 くたびれた鞄に、急いで荷物を詰め込む。 いつか聞いた彼女の故郷。 「あのね。空の色が違うの。此処とは全然違うんだよ」 バンドの練習の帰り道、くすんだ空に両手を広げた彼女。 「空なんて、何処も同じだろ」 「違うんだってば。来れば判るよ」 彼女の故郷へと向かう電車に乗り込む。 今度は、同じようにしゃがみ込んでかたつむりを見るよ。 とりあえずは、君の故郷の空の色を。 これからの人生、守りたいものがあってもいい。 産まれてくる命が、君と同じ目をしていればいいな。 大切な人への贈り物へ ランキング投票へ
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・2005年07月 [8]
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